〜VOL12〜 那覇市おもろまちの戦争遺跡 都会の真ん中にある激戦の場所「シュガーローフの丘」

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那覇市「おもろまち」 周辺はモノレールが通り、高層マンションが建ち並び、DFSには観光客が足を運ぶ。

那覇市随一の都会「おもろまち」。

1日中賑わっているこの華やかな町も沖縄戦時には激戦地となりました。

この場所で沖縄戦時に今では想像もできない激しい戦闘「シュガーローフの戦い」が行われました。

本記事では「シュガーローフの戦い」を解説。今に残る「シュガーローフ」の跡地についても解説します。

「シュガーローフ」の戦いとは

奥に見えるのがシュガーローフの丘。手前には日本軍の47ミリ砲がある。「沖縄県公文書館所蔵」

「おもろまち」周辺の丘は「嘉数高地」や「前田高地」同様、日本軍司令部のある首里を守る防衛ラインでした。

現在の「メインプレイス」のショッピングセンター近くに、大きな貯水タンクがある小高い丘があります。
当時この丘を日本軍は「安里52高地」アメリカ軍は「シュガーローフの丘」と呼んでいました。

解説:シュガーローフの意味
攻撃を担当した大隊長がその丘の形を見て砂糖菓子(シュガーローフ)のようであったことから命名されたとされてといわれている。※諸説あり

首里周辺で、大規模な戦闘を繰り広げていた両軍。

アメリカ軍は予想以上に進軍が進まないことに焦り、首里西側から那覇方面にでてさらに日本軍司令部がある首里を後方からせめる計画をたてます。

進路の途中にあるのが、「シュガーローフ」、「ハーフムーン」、の2つの丘と、それらの南側の馬蹄形斜面である「ホースシュー」でした。

シュガーローフ、ハーフムーン、ホースシューの位置関係
シュガーローフ、ハーフムーン、ホースシューの位置関係

それぞれの丘に日本軍は独立混成第44旅団約5000名が配備され、地下は無数のトンネルによって結ばれ、物資や人員の補給など、互いに補いながらアメリカ軍を迎え撃つ強固な要塞となっていました。

日本軍は以下のような陣地を反対斜面(反射面陣地)に作り、各高台と連携しアメリカ軍に対抗。

解説:反射面陣地

「反斜面陣地」は敵側から見て反対斜面に構築した陣地のことです。「反斜面陣地」は敵側の観測がしずらく配置している軍の情報をわかりづらくする効果があります。また反対側の斜面などで砲撃などを受けずらいメリットがあります。日本軍は「反斜面陣地」を首里周辺の高地に数多く構築しアメリカ軍を悩ませた。

シュガーローフ・ヒルの反対斜面にある無数の日本軍壕の1つ。
シュガーローフの日本軍陣地 「沖縄県公文書館所蔵」

アメリカ軍は「シュガーローフ」一帯(ハーフムーンなどを含む)をおさえることで、那覇への侵攻と首里の西側に出ることができます。逆に日本軍は「シュガーローフ」一体を取られると、首里防衛がきびしくなります。

「シュガーローフの丘」を巡って沖縄戦一の激戦となりました。
5月12日から始まった「シュガーローフでの戦い」は1週間で11回も占領主を変えるほどの激戦でした。

5月18日にアメリカ軍は「シュガーローフ」一帯を占領しました。

この戦いでアメリカ軍は、2662名の死傷者と1289名の戦闘疲労患者を出したと言われています。日本軍の損害は統計がないため明らかではありませんが、アメリカ軍を上回るかなりの数の死傷者が出ていると思います。

この戦いを制したアメリカ軍は那覇に侵攻。そして首里攻撃を有利に進めます。

首里の陥落も間近に迫りつつある中、この戦いの1週間後日本軍司令部は首里から南部に撤退するのです。

現在、激戦地の後にひっそりと残る「シュガーローフの戦い」の碑

戦後この地は、アメリカ軍に接収され、住宅街になりました。その後1987年に全面返還され、再開発でホテル、タワーマンション、大型ショッピングセンターなどとても都会的な賑やかな町になりました。

シュガーローフの戦いの案内板

再開発で既に戦場としての面影はなく、高台の貯水タンクの上にひっそりと冒頭画像の案内板があります。都会のど真ん中にある激戦地の跡。

すぐ目の前には華やかな都会の町が広がります。

街ゆく人に「ここで数千名の人が亡くなっているんだよ」と伝えてもきっと信じてもらえないでしょう。それくらい現在の街の雰囲気は華やかです。

その対照的な光景に、ここが激戦地だったということが風化してしまうのではないかと懸念してしまいます。

今の平和に感謝しつつ、次世代に繋げていきたいです。

【“戦い、そして、死んでいく” 〜沖縄戦 発掘された米軍録音記録~】

予告編はこちら ➡︎

2023年にNHKで放映された【“戦い、そして、死んでいく” 〜沖縄戦 発掘された米軍録音記録~】では「シュガーローフの戦い」を戦ったアメリカ軍第6海兵師団の兵士の肉声が公開されました。日本側の記録が乏しいので、(ましてや日本兵の肉声は残っていない)とても貴重な資料です。

兵士の慌ただしい口調や息遣いから緊迫した「シュガーローフの戦い」の様子がひしひしと伝わってきます。

「日本兵がいたるところからマシンガンを撃ってきた」
「部隊は散り散りになりまさに大量殺人だ」

“戦い、そして、死んでいく” 〜沖縄戦 発掘された米軍録音記録~より

現在本編はNHKオンデマンドやU-NEXTで視聴可能です。

今なら新規登録で実質無料で視聴可能
 

【シュガーローフ】

 

住所
沖縄県那覇市おもろまち1丁目6
駐車場
有料コインパーキングあり

戦争遺跡の詳細を知りたい方、記事の内容が気になる方、
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是非お気軽にお問い合わせください。

ひと目でわかる沖縄戦の戦跡一覧をリリース中
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