県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ
冒頭の言葉は大田實海軍少将(沖縄戦での海軍のトップ 死後中将に昇進)が自決する前、海軍次官宛に発信した電報です。
当時の訣別電報によく使用された「天皇陛下万歳」「皇国ノ弥栄ヲ祈ル」などの言葉はなく、ひたすら沖縄県民の様子を訴えています。
現代語訳すると、「沖縄県民に対し、後程、特別のご配慮を頂きたくお願いする」という訳になります。
沖縄での海軍の戦い
元々沖縄周辺海上で航空決戦と位置づけていた日本軍は、多くの飛行場を建設していきます。
建設した海軍飛行場の防衛や後方支援のため派遣されたのが「沖縄方面根拠地隊」でした。
しかしその後、沖縄戦を航空決戦ではなく、持久戦として戦う作戦転換があり、沖縄方面根拠地隊も陸戦隊として沖縄戦を戦うことになります。
沖縄方面根拠地隊には最終的に約1万人が配置されましたが、陸戦部隊として訓練された兵隊は約2,500名で、その他は基地航空隊、設営隊、後方勤務の部隊で、現地防衛招集者も3~4,000名。
沖縄戦時、海軍のトップ大田司令官は豊見城の司令部壕で指揮をとっていました。
首里に司令部がある陸軍は首里周辺での戦闘が激化すると、1945年5月22日南部喜屋武半島への撤退を決めます。海軍も喜屋武半島の撤退を決めますが、命令の行き違いがあり、撤退がかないませんでした。
6月に入ると、司令部壕周辺の小禄半島で戦闘が激しくなり、海軍は司令部壕付近に孤立する状況となりました。
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6月4日にはアメリカ軍が小禄飛行場(那覇空港)の北部に上陸し、司令部壕のある那覇市南西部を包囲を開始。大田司令官は6月6日夕方に辞世の句とともに訣別の電報を打って自らの覚悟を伝え、同日夜に冒頭紹介した電報を打ちます。
その後も抵抗虚しく、司令部壕はアメリカ軍に囲まれて6月13日、拳銃で自決しました。また4千人ほどが壕内または周辺で亡くなったと言われています。
現在は「海軍司令部壕」として整備
豊見城市の高台に作られた海軍壕公園は眺めが良く、那覇市や東シナ海、首里城も見渡せます。琉球王朝時代には外国の船が海から確認できると、狼煙をあげ首里王府に伝えたとのことです。
そのような役割から、この高台は火番森(ヒバンムイ)と呼ばれています。
戦時中は標高74メートルなので「74高地」と呼ばれていました。
高台且つ、第32軍の司令部の首里城が見渡せるのでこの地に司令部が作られました。
現在、海軍壕公園内にある海軍司令部壕は資料館となり、一部復元され公開されました。一般財団法人の「沖縄観光コンベンションビューロー」が管理しているのとても綺麗に整備されています。
つるはしとスコップで造成された壕は、地下20メートルの場所に450メートルの長さがあります。壕内には約3,000人の将兵が昼夜5ヶ月間かけ、手掘りで掘った跡、手榴弾で自決した弾痕跡、大田司令官が壁に書き残した文字などが残っており、当時の様子がわかります。
壕の入り口には資料館があり、資料室内には、銃器や軍服など壕内より発掘された遺品や家族へ宛てた手紙など、旧日本海軍についての資料を展示しています。
敷地内の慰霊碑には、大田司令官の遺骨が納められている。
敷地内には、大きな慰霊碑もありここで慰霊祭も行われます。
実は表から見るとわからないのですが、慰霊碑の裏に行くと、大田司令官の遺骨が納められている納骨所があります。戦後、大田司令官の遺骨は発見されご遺族の元に戻ったのですが、大田司令官の夫人の要望で遺骨を慰霊碑に分骨しました。
毎年大田司令官が自決した6月13日には慰霊祭が行われ、大田司令官、沖縄戦で亡くなった方々を偲んでいます。
海軍司令部はとても状態が良い戦跡です。
空港からも近く、アクセスも大変良いので、是非訪問してみて下さい。
大田司令官が発した電報「沖縄県民斯(か)ク戦ヘリ。県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」
沖縄県民が戦わされたこと(巻き込まれたこと)は海軍も含む軍部・行政の責任にあると感じますが、「県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」にはひたすら県民への配慮を求めています。
いつか紹介しようと思いますが、沖縄本土復帰後初代日本銀行那覇支店の「新木文雄」支店長や沖縄サミットを決めた「小渕恵三」総理大臣のようににしっかりとこの言葉が受け継がれています。
【海軍司令部壕】
- 住所
- 沖縄県豊見城市字豊見城236番地
- 駐車場
- あり
- 電話番号
- 098-850-4055
- 定休日
- なし
- ホームページ
- http://kaigungou.ocvb.or.jp/
- 入場料
- 大人¥600 沖縄県民は¥300(証明書の提示が必要) 小人¥300 沖縄県民は¥150(証明書の提示が必要)
お車でお越しの方は、公園周辺の道は狭い箇所が多いので気を付けましょう。
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